中途入社の職場で、経験の浅い人がリーダー。それなのに、なぜかモヤモヤ…
相談内容(40代、女性)
中途採用で入社した会社で、自分よりもスキルや経験が浅い社員がリーダーを務めています。
自分自身は別のミッションで採用されており、リーダーに選ばれなかったこと自体には納得しています。
ただ、そのリーダーは業務が多忙で、チームを導くビジョンや方針を示す余裕がなく、業務が属人化している状態です。自分は育成的な目線でサポートしているつもりですが、最近はなぜかモヤモヤが大きくなってきて、「なぜこんなに引っかかるのか」が自分でも分からなくなってきました。
モヤモヤの原因は、「価値観のズレ」や「力を発揮できない感覚」かもしれません
今回のようなケースでは、単なる不満というよりも、以下のような感覚が重なっていることが多いです:
- 自分の中にある「こうあるべきリーダー像」と現実のギャップ
- 本来発揮できるはずの力を抑えているような感覚
- チームの未来が見えないことへの漠然とした不安や危機感
たとえば、あなたが「チーム全体を育て、方向性を示しながら前進するようなリーダー像」を持っているとします。
目の前のリーダーは“多忙さ”から場当たり的な対応になりがちで、そのギャップが理解していても納得できないモヤモヤを生んでいる可能性があります。
「キャリア・アンカー」が刺激されている可能性も
キャリア心理学者シャインの「キャリア・アンカー理論」では、キャリア選択において最も大切にしている価値観(アンカー)が存在するとされています。
今回のような状況で違和感を抱きやすい人は、以下のようなキャリア・アンカーを持っている傾向があります:
- マネジメント・指導的能力:人を育て、組織を動かす役割にやりがいを感じる
- 自律・独立:自分の考えで自由に動くことに価値を感じる
- 奉仕・社会貢献:誰かの力になることや育成を通じた貢献にモチベーションを持つ
こうした価値観を持つ人にとって、「力を発揮できない」「改善したくても動けない」という状況は強いストレスとなりやすいのです。
シャインは、キャリアにおいて人はそれぞれ、「これだけは譲れない価値観(=キャリア・アンカー)」を持っていると提唱しました。
たとえば「専門性を深めたい」「自由に働きたい」「人を育てたい」など、自分の中の“軸”を知ることで、キャリアの選択やモヤモヤの理由が見えやすくなるのです。
「支えるつもり」が「背負いすぎ」になっていないか?
あなたが「育成の目線で関わっている」という姿勢はとても素晴らしいものです。
ただ、自分でも気づかないうちに、リーダーの役割を“補う”ことに疲れてしまっているかもしれません。
本来、リーダーが担うべき責任を代わりに負ってしまうことで、
- 自分のキャパシティを超えてしまう
- 「うまくいかないのは自分のせい」と自己否定に陥る
といった悪循環に入ることも。
モヤモヤを整理する3つのステップ
【1】モヤモヤの正体を言語化する
まずは、自分の感情の背景にある価値観や期待を掘り下げてみましょう。
- 自分はどんな働き方を大切にしている?
- 今、その価値観は満たされている?
- 本当は、どんな役割で力を発揮したいと思っている?
- リーダーに何を期待していた?
【2】「どこまで関わるか」を見直す
育成的な関わりはとても価値がありますが、自分の役割を明確にしないまま“なんとなく”補い続けていると、心が疲れてしまいます。
- 「任せる」「信じる」も支援のひとつ
- 自分の健全さを守るための“線引き”を持つことも大切
【3】今後のキャリア視点で意味づけする
たとえば、「このリーダーに頼らなくても回る仕組みをつくること」を自分のミッションと捉えてみるのもひとつの方法です。
そう考えることで、今の状況が「スキルを高める場」として再定義され、モヤモヤを乗り越える力に変わるかもしれません。
最後に:あなたの“育てたい気持ち”はキャリアの武器になる
「育てたい」「導きたい」と思えるあなたの視点は、今後のキャリアにとって大切な強みです。
ただし、その力を発揮する場や役割とのバランスを誤ると、自分自身が疲弊してしまいます。
だからこそ今、「なぜこの状況が引っかかっているのか」を丁寧に見つめ直すことが、次のステップへのヒントになるはずです。