外部の人がいる前で「話が長い」と言われ、モヤモヤしました
ご相談内容(30代、女性)
ある日、社外取引先との打ち合わせがありました。その中で社外担当者に対して、上司から「うちの〇〇は話が長いんですよ」と言われました。「笑い話ですけどね」と付け加えられましたが、外部の人がいる前で、初めてそんなことを言われたことにショックを受けました。
自分でも「話が長くなりがちだな」と思うところはあるのですが、「なぜこの場で、初めて言うようなことを言うの?」という気持ちがモヤモヤと残っています。
モヤモヤの背景には「認知的不協和」があるかもしれません
まず、「なぜこんなに引っかかっているんだろう?」という違和感に丁寧に目を向けようとしているあなたの姿勢は、とても素晴らしいことです。
加えて、外部の人がいる場で、相手の受け取り方を十分に考えずに冗談を口にした上司にも、やはり配慮不足があったと言えるでしょう。
冗談のつもりだったとしても、場の影響力は大きく、時に人を傷つけることがあります。
このような出来事は、心理学でいう「認知的不協和(Cognitive Dissonance)」の状態と捉えることができます。これは、信じていたことと現実との間に矛盾があるときに生じる心理的な不快感のことです。
たとえば、
- 「上司は自分を信頼していると思っていた」
- 「配慮ある人だと思っていた」
といった前提と、
- 「外部の人がいる場で、冗談とはいえ否定的なことを言われた」
という現実がぶつかったとき、人は無意識のうちに強い違和感や不快感を覚えます。これはあなたが繊細だからではなく、ごく自然な心の反応なのです。
認知的不協和とは、「自分の考え・信念・期待」と「実際の出来事や他人の言動」が矛盾したときに生まれる“心理的なモヤモヤ”のこと。
たとえば、「“自由に意見を言っていいよ”と言われたのに、発言したら否定された」
「自分ではうまくやっているつもりなのに評価されない」
──そんなときに感じる違和感や戸惑いは、まさにこの状態です。
この“ズレ”に気づき、自分の感情や価値観を再整理していくことが、キャリアの自己理解にもつながっていきます。
スーパーの「ライフ・キャリア・レインボー」から見える役割の重なり
キャリア理論であるドナルド・スーパーの「ライフ・キャリア・レインボー」では、私たちは人生の中で複数の役割を同時に担いながら、キャリア(生き方)を築いていくとされています。
たとえば、「職業人」「家庭人」「友人」「市民」などがその一例です。
今回のような出来事では、
- 「職業人として外部との信頼関係を築く責任」
- 「職場内の一メンバーとしての立場」
この二つの役割がぶつかり合い、「自分はどう振る舞いたいのか」「どう見られたいのか」といった自己概念(セルフイメージ)が揺れ動いたのかもしれません。
スーパーは、「キャリア=仕事」だけではなく、人生の中で担うさまざまな役割の重なりによって形づくられると考えました。
「職業人」「家庭人」「親」「友人」「市民」など、私たちは常に複数の役割を同時に生きています。そのバランスが揺らいだときに、モヤモヤや違和感が生まれることもあるのです。
今回の体験は「自己理解」を深める大きなヒントになります
「モヤモヤした感情」には、必ずその人らしい価値観や大切にしていることが潜んでいます。
たとえば、
- 「相手を尊重する関係性を築きたい」
- 「外部の人との信頼を損ないたくない」
という思いがあるからこそ、今回の言葉に反応したのではないでしょうか。
そう考えると、このモヤモヤは「自分の大切にしたい価値観」が明確になる貴重な機会とも言えます。
前向きなヒント:誠実さを強みに変える
「話が長くなってしまうかも」という自己認識は、
- 情報を丁寧に伝えたい
- 誤解を避けたい という誠実さの現れでもあります。
その一方で、キャリアを進めていく上では、
- ポイントを簡潔に伝える力
- 相手の理解度に合わせた伝え方
といったスキルも大切になってきます。
これは「足りないから直す」のではなく、「強みを活かしながら磨いていく進化」と捉えると良いかもしれません。
まとめ:感情に向き合うことはキャリアを育てる力になる
今回の出来事は、確かに上司の配慮不足による側面も大きいでしょう。 でも同時に、あなたが大切にしたいもの、自分の価値観に気づくきっかけでもありました。
キャリアにおいて、「自己理解」と「環境理解」は常にセットで深まっていくものです。モヤモヤしたことを丁寧に見つめ直すことこそが、自分らしいキャリアを築く大きな一歩になります。
どうかこの経験を、あなた自身を見つめるきっかけにしてみてください。